芸術色彩研究会

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色彩と質感の地理学−日本と画材をめぐって (5)

なぜ日本の芸術大学では色彩学をきちんと教えないか


 

中村:僕は美術大学出身ですが、例えば受験のときもデッサンをたくさんさせられましたけど、あんまり色については本格的に学んでこなかったなと思いました。デザイン学部だとまた違うのかもしれませんが。それで今回、三木さんに僕の作品の色彩分析もやってもらったんですが、配色は意識したとしても、明度や彩度まで自分の中でコントロールしていたかなっていうと、まったくではないですが、強くは意識していなかったと思ったんですね。というかあえて調整しないということもある。今は紙だけじゃなくてモニターで色を見ることが凄く増えてますから、その時代に合わせた色彩感覚っていうのも世界的に生まれているとは思うんですけども、やっぱり大学でアカデミックに色彩についてちゃんと学んでこなかったなとということはあらためて思いました。岩泉さんも美大出身ですよね。

 

岩泉:そうです。京都造形大学。

 

中村:色彩に関する授業とかやってましたか。

 

岩泉:まったくなかったですね。

 

中村:まったくですか。僕は、色彩学、ヨハネス・イッテンぐらいはやった記憶があるんです。でも、それが自分の制作に具体的な影響を与えいるかというと、そんなことはないし…何でなんでしょう、美大で色彩のことを体系的に学ばないっていうのは。

 

三木:僕もこの話を受けた時にちょっと調べたんです。いちおう、ちゃんとわりと近代色彩学の発展と明治の開花とわりと平行してるので、早い段階から入れてるし。

 

中村:西洋の色彩理論が入ってきてた。


三木:相当入ってるし、東京芸大の前進の東京美術学校でも結構やってるんですけど、ただそれがだから現在になった時になんか途切れてるんですよね。途切れてるし、それこそバウハウスみたいなのを基礎課程みたいな形で、みんなが色彩を重要な項目として受けるというプロセスをやってるところはほとんど現在においてもなくて、こういう話をしても、ほとんどみんなやったことないと言っていますね。

 

中村:イッテンもバウハウスで教えてたんですよね。

 

三木:イッテンが教えていて、途中でグロピウスと喧嘩をして。それで弟子のアルバースに受け継がれるんですよね。

 

中村:確かにアルバースの作品は、そうした問題意識でつくられていることがわかります。そのアルバースがアメリカに渡って…。

 

三木:ブラックマウンテンカレッジとかで、ラウシェンバーグとかサイ・トゥオンブリー。

 

中村:そうやって受け継がれていく。

 

三木:そうですね。だから、やっぱり西洋色彩学の影響はもの凄くあります。

 

中村:でも、日本でそういうフォーマルな絵画の色彩分析ってあんまり読んだことないないですね。

 

三木:ないですね。あるっていう人がいれば教えてもらいたい。

 

中村:情報があれば、みなさんからも教えていただければ幸いです。

 

岩泉:当時、やろうとはしてたんですよね、

 

中村:岩泉さんが古本屋で手に入れた本があるということですが。

 

岩泉:そうですね。これいつでしたっけ、明治ぐらいですよね。『色彩新論」。

 

図4

田口米作《色彩新論》1910年

 

 

中村:みなさんに見せてください。どこで手に入れたんですか。

 

岩泉:ネットの会社です。でも、置いてたのは京都の古本屋さんですね。美術関係を扱ってる所で手に入れたんですけど。

 

中村:明治期の本なんだ。凄いですね。カラー印刷なんですか。

 

岩泉:一部カラーです。明治四三年ですね。中も結構、凝ってるんですね。こういったことを当時やろうとしてたんですけど、書いてた人が亡くなっちゃったらしくて、誰かに引き継いでやったらしいんですけど、そこでたぶん止まっちゃったんじゃないか。

 

三木:この人は日本画家で実践的な人なので、学校教育とは別なんですけど、もう少し実践的な教え方があったんじゃないかという可能性ですね。だから、東京芸大とかではしっかりアカデミックのものが入っていたのは入っていた。ですけど、おそらくもう少し実践的な方法みたいなことは止まってたのかもしれない。

 

中村:作家っていうのは、自分の経験に基づいた色彩の感覚なり理論っていうのはある程度持ってると思うんですけども、アカデミックなものは…。

 

三木:持ってないですからね、元々。

 

中村:そう。だけど、そういうのをもし大学でちゃんと教えることがあれば、作品制作に跳ね返ってくるはずです。

 

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芸術色彩研究会(芸色研)は、芸術における色彩に関する研究を行い、色彩から芸術やその奥にある感覚や認知、感性を読み解き、実践的な創作や批評に活かすことを目指します。ここで指す色彩は、顔料や染料、あるいはコンピュータなどの色材や画材だけではなく、脳における色彩情報処理、また素材を把握し、質感をもたらす要素としての色彩、あるいは気象条件や照明など、認知と感性に大きな影響を及ぼす色彩環境を含むものであり、芸術史を感覚史的に読み直すことでもある。創造行為としての芸術は、環境と脳を含む身体の不断のフィードバッグの成果であり、芸術色彩研究会(芸色研)では、その情報交換を読み解く鍵として色彩を位置付けていく。
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